ただいま

重く疲れきった体を引きずるようにして、ようやく明かりの灯るあの玄関へとたどり着く。

鍵を取り出そうとポケットに手を伸ばしかけたところで、目の前のドアが開かれた。

「おかえりなさい!」

それはいつもと変わらない絶妙なタイミング。

明るい声とともに優しい笑顔が出迎えてくれる。


そのことにたまらなくホッとして、なにも言わずに彼女を抱きしめた。

甘い香りに包まれると、自分の体を縛りつけるすべてから開放されるようだった。

「今日もお疲れさま」

まるで小さな子どもにするように、彼女が優しく頭をなでる。

それがたまらなく心地良くて、ついもっともっとと求めたくなる。

吸い込まれそうな瞳に誘われるまま、そっと顔を近づけた。

「……ただいま」

そう言うと、彼女の額に優しく口づけた。

「えっ。……う、うん。おかえり……」

顔を真っ赤にして照れる姿が愛おしくてたまらない。


両腕にぎゅっと力を込めて彼女を強く抱きしめる。

大切なぬくもりを絶対に手放さないように。

〜 Fin 〜




雪の花冠トップページ