たった一つしか違わないのに、自分が年下ってだけで、なんとなくカッコワリーと思ってた。
ほら、男だったらやっぱリードしたいじゃん。
ほんのちょっとだけでいーから、常にカノジョより一歩先を行くカンジ。
カノジョより物知りだったり、カノジョのできないことをさりげなくやれちゃったり。
そんな些細なことでいーから、旬平くんってやっぱすごいね、なんて言われたいじゃん。
そのためならどんな努力だってするつもりだったのに。
――よりにもよって、なんで年上なんだよ。
年齢だけは、どんなに頑張ったって絶対に越えられねーじゃん。
大人っぽいとか渋いとか、そんな系統の服を選ぶと、決まって彼女は首を横に振る。
聞けば、俺らしくない、なんてミもフタもない返答。
せめて外見だけでも年の差を縮めたいと思ってる俺の気持ちを、あっさりと切り捨ててくれちゃうんだよな。
そんでいつもの定番スタイルを試着すると、彼女は満面の笑みでOKサイン。
そりゃ俺だって好みのデザインだし、褒められて嬉しーけど……なんか違うんだよなぁ。
買い渋る俺を見て、彼女がさりげなく口を開く。
「これ、大人っぽくてすごく格好良いよ。旬平くんってそういうのも似合うから羨ましいな。 私なんて子どもっぽいから、もっと頑張らないと釣り合い取れなくなっちゃうね」
その言葉に、俺は軽い衝撃を受けた。
「いやいや、なにそれ。あんた俺より年上じゃん」
「う、それはそうなんだけど。もう、旬平くんが大人っぽいからいけないんだよ」
そう言うと、彼女はぷいっとそっぽを向いた。
そういう態度は確かに子どもっぽくて、めちゃくちゃ可愛い。
俺は一体今まで彼女のなにを見ていたんだろう。
年下だからカッコワリーとか、男だからリードしたいとか、そんなくだらないものさしで二人の仲を計っていたなんて。
彼女は年下の俺をちゃんとありのままの姿で見てくれてたんじゃねーか!
「あんたやっぱ最高だよ。俺が惚れただけのことはある」
「あー、旬平くんってば、またそうやって私のことからかうんだから」
今度は赤く染まる頬を両手でおおって、彼女は困ったように口を尖らせる。
そうそう、そういう態度が彼女との年の差を感じさせないんだよな。
俺と彼女の間に、越えられない壁なんてない。
たとえそれが年の差だとしても、彼女がいればこんなに簡単に乗り越えられる。
これから先、もっと困難な壁が立ちふさがっても、彼女とだったら乗り越えてみせるぜ。
それがきっと本当の男らしさってヤツだと思うからさ。
〜 Fin 〜